4.今月のオススメ図書 今月は、向田邦子さんを紹介します。 人気ドラマの脚本を手掛け、エッセーを書き、短編小説で直木賞受賞…と目覚ましい活躍をしていたさなかに飛行機事故で51年の生涯を閉じた向田邦子さん(1929〜81年)。8月で没後40年を迎えるのを前に、関連本が相次いで出版されています。昭和はもちろん、平成を超え、令和となった今も、作品が読み継がれています。 今年は没後40年の向田邦子さんの著書「向田邦子 ベスト・エッセイ」がコロナ禍で「ごく普通の日常」に共感され、今話題になっています。 プロフィール (1929-1981)1929(昭和4)年、東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。1980年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。1981年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去。 秋田県点字図書館が選ぶ、向田邦子ベスト10。 (番号でもリクエストをお受けします。) @ 向田邦子 ベスト・エッセイ 出版2020年  向田邦子著 向田和子編 お人好しと意地悪、頑固と機転… 人間の面白さを描いた名エッセイ! 家族、食、旅、仕事、こだわりの品など、テーマ別に末妹が50篇を精選 幼いころから磨かれた観察眼と黙っちゃいられない正義感。向田邦子の手にかかれば、ごく平凡に見える日常が鮮やかな色彩を帯びて動き出す。考え抜かれた言葉選びと胸がすくどんでん返しは、まさにエッセイのお手本。「姉のところには何故か面白いことが押し寄せてくる」と語る末妹が選んだ、家族、食、私、仕事のことから処世術まで。 A思い出トランプ 出版1980年 浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など─日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。 B阿修羅のごとく 出版1985年 阿修羅。三面六臂を有するインドの魔族。猜疑心強く互いに事実を曲げ、他人の悪口を言いあう…。妻子ある男を愛人に持つ長女、夫の浮気に悩む次女、オールドミスで潔癖性の三女、売れないボクサーと同棲中の四女。阿修羅のイメージにのせて、四人姉妹のそれぞれの人生を、繊細に、辛辣に、そして限りなく温く描き出す、悲しくも愛すべき物語。 Cあ・うん 出版1983年 つましい月給取りと羽振りのいい中小企業の社長。太平洋戦争をひかえた世相を背景に、男の熱い友情と親友の妻への密かな思慕が織りなす市井の家族の情景を描く。 D父の詫び状 出版1978年 怒鳴る父、威張る父、殴る父、そして陰ではやさしい心遣いをする父、誰でも思い当たる父親のいる情景を爽やかなユーモアを交えて描き、名人真打ちと絶賛された著者の第一エッセイ集。 Eきんぎょの夢 出版1997年 おでん屋を経営する砂子には、結婚してもいいと思っている男がいる。ある日、店に見知らぬ女がやってきて─ 婚期を逸した女のはかない夢を描いた表題作の他、結婚をめぐっての親と子の行き違いをテーマにした「母の贈物」と、子の無い老夫婦の哀歓を優しく見つめた「毛糸の指輪」の計三篇を収録。 F冬の運動会 出版1998年 高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた菊男は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。そんなある日、ふとしたきっかけから、菊男は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。 G完本寺内貫太郎一家 出版2013年 〈貫太郎のモデルは、私の父向田敏雄である。よくどなり、よく殴り、5年前に亡くなった。お線香代りに、ちょっぴり「立派な男」に仕立て直してお目にかけた…〉。口下手で怒りっぽいくせに涙もろい、日本の愛すべき“お父さん"とその家族をユーモアとペーソスで捉え、きめ細かな筆致で下町の人情を刻み、東京・谷中に暮す庶民の真情溢れる生活を描いた幻の処女長編小説。 未完だった著書を残された脚本をもとに全集の編者、鳥兎沼(うとぬま)佳代が書き継ぎ、名作の全貌を味わえる決定版。 H蛇《だ》蠍《かつ》のごとく 出版1998年 小心・真面目なサラリーマン古田は、近く退社するという部下の女子社員と一世一代の不倫を計画していた。だが、その当日、妻が会社に来る。娘が妻子ある男と同棲を始めようとしていたのだ。「遊びか、真剣か」とつめよる古田に男は「遊びだ」とうそぶく。不倫をテーマに、微妙な人間心理と家族のあり方を描く。 この作品は向田邦子氏の放送台本を中野玲子氏が小説化したものです。 I無名仮名人名簿《むめいかめいじんめいぼ》 出版1995年 「正式魔」「キャデラック煎餅」「女子運動用黒布襞入裁着袴」「臆病ライオン」「眠る机」「青い目脂」…昭和のにおいがするタイトルの数々。愚痴をこぼす代りに真赤になるまでおみおつけに唐辛子をかけ、すすっていた祖父。届いたお歳暮をすぐ開けたくて青筋をたてた父。包み紙を破らないよう丁寧に開けていた母。一度でいいからメロンをまるまる一個食べてみたかった自分。戦前・戦後の平凡な家庭の暮らしをみずみずしく描く、忘れがたいエッセイ集。