4.今月のオススメ図書 今月は瀬戸内寂聴さんの著書を紹介します。 恋愛や歴史、そして老いなどをテーマに数々の小説を発表し、法話を通じて多くの人たちに生き方を説いた作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが9日、心不全のため京都市内の病院で亡くなりました。99歳でした。 瀬戸内寂聴さんは徳島市出身で、大学を卒業後、本格的に小説の執筆をはじめ1957年に「女子大生・曲愛玲」で文芸雑誌の賞を受賞して文壇デビューしました。 1963年にはみずからの波乱万丈な恋愛経験をつづった私小説「夏の終り」で女流文学賞を受賞するなど、恋愛小説や伝記小説を次々と発表し、経済的にも精神的にも自立する新たな女性の生き方を生き生きと描いて多くの女性の読者から圧倒的な支持を受けました。 1973年、51歳のときに作家として新しい生き方を模索したいと岩手県の中尊寺で得度しました。 その後も、愛や芸術に生きる女性や信仰の道を求める人などの姿を通じて「性」や「老い」など人間の本質を鋭く描き出す作品を数多く執筆し、1992年には一遍を描いた「花に問え」で谷崎潤一郎賞を受賞しました。 また、「源氏物語」の現代語訳は、当時、ブームの火付け役となり、光源氏を取り巻く女性に焦点を当てた新しい視点と読みやすい表現で高い評価を受けました。 1997年には文化功労者に選ばれ、2006年には文化勲章を受章しています。 瀬戸内寂聴さんの代表作と近年発表された著書を紹介します。 @ 花芯 内容 「きみという女は、からだじゅうのホックが外れている感じだ」それが越智《おち》の口癖だった。親の決めた許婚と結婚した園子《そのこ》は、突然、夫の上司の越智に生まれて始めての恋をした。発表当時「子宮作家」と称された作家による表題作外4篇の短篇集。 A夏の終り 内容 妻子ある不遇な作家との8年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされぬ女、知子…彼女は泥沼のような生活にあえぎ、女の業に苦悩しながら、一途に独自の愛を生きてゆく。新鮮な感覚と大胆な手法を駆使した女流文学賞受賞作の「夏の終り」をはじめとする「あふれるもの」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5編を収録。著者の原点となった私小説集である。 Bかの子繚乱 内容 童女か、聖女か。絢爛豪華な文学遺産と多くの伝説を残したまま火のような生涯を閉じた岡本かの子の内面を、会心の筆で描く。 C美は乱調にあり 内容 九州から上京し女学校に通う主人公が、新任教師の男を知ったのが波瀾の生涯の始まりであった。男との熱烈な恋、文学への参加。28歳で凄惨な死を迎えた、激しい女の生命と乱調の美に彩った生涯をたどる。 D遠い声 内容 大逆事件で処刑された若き女性革命家の管野須賀子《かんのすがこ》。数奇な生い立ちと恋愛遍歴、革命への狂熱的な行動など、彼女の短く烈しい生涯を描く。 E花に問え 内容 絶対の孤独と漂泊に生きた“捨聖《すてひじり》”一遍上人《いっぺんしょうにん》と、彼ら終生つき従った尼僧の超一。『一遍聖絵《いっぺんひじりえ》』に描かれた彼らの姿と内なる対話を繰り返しながら、無限の自由を求めてさまよう、京都の老舗旅館の女将・美緒の心の旅。谷崎潤一郎賞受賞作。 F場所 内容 大地はすべてを記憶している。生きてきた場所に立てば、大地の記憶の声が伝わってくる。徳島、京都、三鷹、練馬、目白…。生まれ育ち、小説を書いた数々の土地を再訪し、秘められた過去を明かす私小説。 G愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉 内容 想像力こそが思いやりであり、思いやりは愛である。愛と苦しみは陸続きなのだ─。「愛」「生」「業」「老」などをテーマに、瀬戸内寂聴の珠玉の言葉を厳選し、まとめた名言集。人生の歩みを振り返る貴重な写真も収録。 H寂聴残された日々 内容 災厄の記憶、文人たちの思い出から、若い世代へのエール、コロナ禍での新たな生活まで、まもなく100歳を迎える著者が、いよいよ託す人生の記録。 I笑って生ききる 内容 泣きたいときは辛抱しない。現世なんてサンドイッチのハムより薄い…。健康・夫婦・子育て・老い・人づきあい。迷ったら立ち戻りたい瀬戸内寂聴の熱く優しい希望のことばを、『婦人公論』掲載記事から厳選して紹介する。 J悔いなく生きよう 内容 「今、私は、一分後頓死しても悔はない。これこそ無上の幸福である。」 ひとりの女として、人生の先達として、切に生きる喜び、感動する喜び、感謝する喜びを綴ったエッセイ集。本音で幸せに生きる極意が満載。 Kわかれ 内容 親しい友人も肉親も、愛した男たちもすべて、もうこの世にはいない─。病を乗り越え、90歳を過ぎてなお、書かずにはいられない衝動に突き動かされ、紡ぎ出された珠玉の小説9編。 L命あれば 内容 季節の移ろいを眺め、ふるさとを思い、懐かしい人々を偲び、非業な事件を嘆く。この世のあらゆる変遷を見てきた97歳の著者が、この時代を生き抜く心がまえを真摯な言葉で綴る。 M求愛 内容 大病からよみがえり、数え年95歳を迎えた著者。波瀾の人生を歩み、執筆に執念を燃やし続けてたどり着いたさまざまな「愛」のかたちをつづる30篇を収録する。 Nいのち 内容 ガンと心臓の病に襲われ、痛切な老いに直面した私。脳裏に蘇るのは、70年近い作家人生で出会った男たちと、筆を競った友の死に様だった─。小説への愛と修羅を生きた女の鮮烈な〈いのち〉を描く。