6.みんなの広場 斉藤明子さんのメールから おいら、ガジュマロ。この家に来て七年くらいになるかなぁ? 三回鉢を取り替えてもらい、夏は風除湿のしみっこにいて、留守番。 何日かに一度たっぷり水を飲ませてくれる家主。 そんなとき、近所の人が足を止め。みかんの木?とかいって家主に声かけてる。さいきんも水をもらっていると、小さな子が足を止めて、なにを育てているの?と、こなまいきに聞いていた。南の国の気でガジュマロというの。とおしえたらホーとおどろいていた。 数日後、家主。おいら以外に水やりしていると、足を止め、沈黙して、あれは?と、おいらをさがしていた。中にいるよと、家主がいうと。忘れないでみずをあげてねと、家主にいうのだ。家主苦笑い。おいらをみることないのかなぁ? 家主と近所の人との橋渡しをしているようだ。 えっへん こんなつぶやき聞こえてきそう? 俳句の投稿 道の駅鉄風鈴《てつふうりん》の音《おと》並《なら》ぶ  萩野ケイ 避難所の道案内は花見月《はなみづき》  宇佐美咲子 塩抜きの終わり初物《はつもの》雑茸《ざつきのこ》  柿崎妙子 迎盆《むかえぼん》ぱらりと雨の来る墓苑《ぼえん》  小笠原秋一《しゅういち》 風鈴やうとうと居《お》れば雨の音  熊谷幸二郎 エッセイ風自分史・三郎 その二六  転 勤 武田金三郎 私が三十一歳の新年度、小学校教師の妻が定期人事異動で小澤田《こさわだ》小学校から鷹巣小学校へ転勤する辞令を受けた。それで、上小阿仁村子澤田の教員住宅から、妻の実家である能代市機織《はたおり》に転居した。ここは東能代駅のほぼ真裏、駅まで歩いて十分ほどである。妻と私はこの駅から乗車し、妻は鷹巣駅で下車、私は鷹巣駅から阿仁合線に乗り換え、米内沢《よないざわ》駅で下車する。 私の通勤時間は乗り換えの待ち時間を含めると一時間半を越える。列車の乗り降りは目の悪い私にとって危険であった。待合室とかホームなど、人が多い場所だとしょっちゅうぶっつかる。視野が狭いことと暗いせいである。普通の人なら曇天《どんてん》の屋内でも平気だし、夜だって電灯一つで支障ない。けれど私には暗すぎる。日本人ってどうしてこうも暗さに溶ける保護色めいた服装なのだ。 お盆が過ぎると午後の日脚《ひあし》は急速に短くなっていく。私の足はこれに連動して浮き足立っていく。列車の乗り降りの足下が不安なのだ。能代営林署に転勤がかなえられたら、この不安が半減される。 二十六歳で労働組合執行委員になっていた私は、二十九歳で書記長にまつりあげられていた。新年度の三月末で定期異動すると、労働組合定期大会の七月まで、書記長が空席になってしまう。定期人事異動を前にした正月過ぎ、私は執行委員長に相談した。委員長は了解してくれた。 転勤した先が能代営林署でなくて二ツ井営林署の貯木場《ちょぼくじょう》事業所であった。東能代駅からだと、能代営林署も二ツ井営林署も通勤状態はさして変わらない。二ツ井署の貯木場は駅の真向かいだから、むしろ便利でさえあると言える。 新任地に赴《おもむ》くと、先ず営林署長に挨拶をする。それから職員全員を引き回される。けれど私はそうしなかった。最初に挨拶をしたのが労働組合執行委員長Fであった。 辞令書を先方に示すように持ち、深々と頭を下げて名のる。先方も席を立って頭を下げ、名前だけの自己紹介をする。これは営林署長も職員たちも同様だから、むろん署長でもちゃんと席を立つ。F委員長は席を立つことなく、くわえ煙草でふんぞり返り、「やあ」と言っただけ。私は唖然とした。 労働組合の会議など、Fのくわえ煙草はトレードマークにはなっていた。けれど、もっと襟を正した対応をすべきものだ。次に挨拶をしたのが書記長のTであったが、彼も椅子から立ち上がることをしなかった。モゴモゴと言って顔を合わせようともしないのだ。 営林署長を差し置いて、全林野二ツ井分会執行委員長と書記長に敬意を表するため赴任の挨拶をした光景は署内職員も見ていたし、官吏官《かんりかん》はじめ課長たち当局管理者たちだって見ていたはずだ。私は彼等に恥ずかしかった。誤解されないため言うと、労働組合幹部としての二人の行為が衆目《しゅうもく》にさらされたことが恥ずかしかったのだ。 署長室に入ると、彼は立って私を迎え入れた。彼の名は山垣恒造《やまがきこうぞう》、三十代半ばの若さである。私は労働組合F執行委員長とT書記長の二人より、山垣営林署長を信頼する。 ○皆様からの投稿について 「点字図書館だより」に、読んだ本の感想や、体験談、短歌・俳句など利用者の皆様からの投稿をお待ちしております。 お預かりした作品は、「点字図書館だより」内「みんなの広場」でご紹介させて頂きます。 (送付先) 〒011-0943 秋田市土崎港南3丁目2の58 秋田県点字図書館 (FAXを利用の場合は) 018-845-7772 (メールを利用の場合は) アドレス tenji@fukinoto.or.jp いずれも「みんなの広場」係まで お電話での聞き取りでも可能です。