3.今月のオススメ図書 第163回直木賞(2020年)が発表されました。 受賞作品と候補になった作品を紹介します。 作品の番号でリクエストできます。 直木賞 @少年と犬 (デイジー版) 著者 馳星周(はせせいしゅう) 著者紹介 〈馳星周〉1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街《ひょうりゅうがい》』で第1回大藪春彦《おおやぶはるひこ》賞を受賞。著者多数。近著に『アンタッチャブル』『陽だまりに天使たち ソウルメイト2』『神奈備《かむなび》』『神の涙』がある。2020年『少年と犬』で第163回直木賞。 内容 家族のために犯罪に手を染めた男が拾った犬。守り神になったその犬はある意志を秘めていた─。人生の無常と犬の神秘性を描いた全6編を収録。『オール讀物《よみもの》』掲載を単行本化。 傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった─。 2011年秋、仙台。震災で職を失った和正《かずまさ》は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞《たもん》という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか… 犬を愛するすべての人に捧げる感涙《かんるい》作! 収録作品 男と犬 泥棒と犬 主婦と犬 直木賞候補作品 A雲を紡ぐ (デイジー版) 著者 伊吹有喜(いぶきゆうき) 著者紹介 〈伊吹有喜〉1969年三重県生まれ。三重県立四日市《よっかいち》高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。2020年『雲を紡ぐ』で第163回直木賞候補。 内容 壊れかけた家族は、もう一度、ひとつになれるのか? 羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布」ホームスパンをめぐる、親子三代の心の糸の物語。『別冊文藝春秋』連載を単行本化。 「分かり合えない母と娘」 壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか? 羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。 いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。 ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。 美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。 一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり…。実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた─。 「時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、『雲を紡ぐ』を書きました」と著者が語る今作は、読む人の心を優しく綴《つづ》んでくれる一冊になりました。 Bじんかん (製作中) 著者 今村祥吾(いまむらしょうご) 著者紹介 〈今村翔吾〉1984年、京都府生まれの時代小説作家。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て専業作家となる。2016年、『蹴れ、彦五郎』で第十九回伊豆文学賞の小説・随筆・紀行文部門最優秀賞、2016年『狐の城』で第二十三回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞をそれぞれ受賞。2017年『火喰鳥《ひくいどり》』が単行本デビュー作となり、啓文堂書店時代小説文庫大賞を受賞、「羽州ぼろ鳶組」シリーズとして代表作となる。2018年「童神《わらびがみ》」で第十回角川春樹小説賞を受賞し、『童《わらべ》の神《かみ》』と改題されて単行本発刊。同作が第8回本屋が選ぶ時代小説大賞候補となると同時に、第160回直木賞の候補に。2020年『じんかん』で第163回直木賞候補。 内容 天正5年のある晩、織田信長のもとへ急報が。信長に忠誠を尽くしていたはずの松永久秀が2度目の謀叛《むほん》を企《くわだ》てたという。だが、意外にも信長は笑みを浮かべ、語り出したのは…。『小説現代』掲載に加筆修正し単行本化。 仕えた主人を殺し、天下の将軍を暗殺し、東大寺の大仏殿《だいぶつでん》を焼き尽くす。 民を想い、民を信じ、正義を貫こうとした青年武将は、なぜ稀代《きだい》の悪人となったか? 時は天正五年(1577年)。ある晩、天下統一に邁進する織田信長のもとへ急報が。信長に忠誠を尽くしていたはずの松永久秀《ひさひで》が、二度目の謀叛を企てたという。前代未聞の事態を前に、主君の勘気《かんき》に怯える伝聞役《でんぶんやく》の小姓・狩野又九郎《かりのまたくろう》。だが、意外にも信長は、笑みを浮かべた。やがて信長は、かつて久秀と語り明かしたときに直接聞いたという壮絶な半生を語り出す。 貧困、不正、暴力…。『童の神』で直木賞候補となった今最も人気の若手歴史作家が、この世の不条理に抗う人すべてへ捧ぐ、圧巻の歴史巨編! C稚児桜《ちござくら》能楽ものがたり (デイジー版)  著者 澤田瞳子(さわだとうこ) 著者紹介 〈澤田瞳子〉1977年京都府生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒業、同大学院文学研究科博士課程前期修了。専門は奈良仏教史。母は作家の澤田ふじ子。時代小説のアンソロジー編纂などを行い、2008年、第2回小説宝石新人賞最終候補。2010年『孤鷹《こよう》の天』で小説家デビュー。2011年同作で第17回中山義秀文学賞を最年少受賞。2012年『満つる月の如し 仏師・定朝《じょうちょう》』で第2回本屋が選ぶ時代小説大賞、第32回新田次郎文学賞受賞。2015年『若冲《じゃくちゅう》』で第153回直木賞候補。2016年同作で第9回親鸞《しんらん》賞受賞。2017年『火定《かじょう》』(PHP研究所)で第158回直木賞候補。2019年『落花』(中央公論新社)で第32回山本周五郎賞候補および第161回直木賞候補に。2020年『能楽ものがたり 稚児桜』で第163回直木賞候補。 内容 破戒、復讐、嫉妬、欺瞞《ぎまん》、贖罪《しょくざい》…情念の炎に、心の凝りが燃え盛る─。「山姥《やまんば》」「小鍛冶《こかじ》」「善知鳥《うとう》」「葵上《あおいのうえ》」といった、能の名曲からインスパイアされた8編の物語を収録する。『なごみ』掲載を書籍化。 わが国最高峰の舞台芸術として受け継がれてきた能楽。 長年、能に親しんできた著者が名曲にインスパイアされて生み出した8編の時代小説集。 1「やま巡り」―遊女・百万《ひゃくま》と小鶴は雪山で怪しげな老婆と出会い、一夜の宿を借りることに…。(原曲『山姥《やまんば》』) 2「小狐の剣」―刀工・小鍛冶宗近《こかじむねちか》の娘・葛女《かつじょ》は、父を裏切った弟子の子を身ごもったことに気づき…。(原曲『小鍛冶《こかじ》』) 3「稚児桜《ちござくら》」―清水寺《きよみずでら》の稚児としてたくましく生きる花月《かげつ》。ある日、自分を売り飛ばした父親が突然面会に現れて…。(原曲『花月《かげつ》』) 4「鮎」―天下を取るべく隠棲《いんせい》先の吉野で挙兵した大海人皇子《おおあまのみこと》。間諜《かんちょう》の蘇我菟野《そがのうの》は都に急報を告げる機会を窺うが…。(原曲『国栖《くず》』) 5「猟師とその妻」―山で出会った男から「自分は死んだと妻子に伝えてほしい」と頼まれた僧・有慶《ゆうけい》。その身勝手さに憤りながらも、残された家族の心細さを思い、陸奥《むつ》へ旅立つことに。(原曲『善知鳥《うとう》』) 6「大臣の娘」―義母に疎まれた姫君を密かにかくまう乳母・綿売《わたうり》。ある日、偶然再会した生き別れた娘に秘密を打ち明けてしまう。(原曲『雲雀山《ひばりやま》』) 7「秋の扇」―遊女・花子は、かつて愛を交わした吉田の少将を追って京へ。形見の扇を手に下鴨神社《しもがもじんじゃ》に現れる姿が評判となるが…。(原曲『班女《はんじょ》』) 8「照日《てるひ》の鏡《かがみ》」―高名な巫女・照日ノ前《てるひのまえ》に買われた醜い童女・久利女《くりじょ》。翌日、生霊《いきりょう》にとりつかれた光源氏の妻・葵上《あおいのうえ》のもとに連れていかれる。(原曲『葵上《あおいのうえ》』) 月刊『なごみ』の連載(2017年7月〜2019年6月)「能楽ものがたり」をもとに加筆。 D銀花《ぎんか》の蔵 (デイジー版) 著者 遠田潤子(とおだじゅんこ) 著者紹介 略歴 〈遠田潤子〉1966年大阪府生まれ。関西大学文学部卒。2009年、第二一回ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜《げっとうや》』でデビュー。一二年、『アンチェルの蝶』で第一五回大藪春彦《おおやぶはるひこ》賞候補となる。また、『雪の鉄樹《てつじゅ》』が本の雑誌増刊「おすすめ文庫王国2017」第一位、『冬雷《とうらい》』が本の雑誌2017年上半期エンターテインメント・ベスト10 第二位となる。その他の著書に『あの日のあなた』『オブリヴィオン』『カラヴィンカ』。2020年『銀花の蔵』で第163回直木賞候補 内容 血なんてつながってなくても、こんなに「家族」だ。大阪万博に沸く日本。座敷童《ざしきわらし》が出るという言い伝えの残る、歴史ある?油蔵で育った少女・銀花は、家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら大人になる…。 秘密を抱える旧家で育った少女が見つけた、古くて新しい家族のかたち。大阪万博に沸く日本。絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、父親の実家に一家で移り住むことになる。そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある?油蔵の家だった。家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら、少女は大人になっていく─。圧倒的筆力で描き出す、感動の大河小説。