3.今月のオススメ図書 今月はハイブリット型総合書店honto《ホント》のホームぺージから、書店員おすすめミステリー小説15選をご紹介します。 1.真夏の方程式 東野 圭吾 (著) 物理学者の主人公が、次々と難事件を解決していく痛快ミステリー小説です。推理要素はもちろんのこと、登場人物のキャラクターが立っていることが、 このシリーズの特徴です。特に本書では、偶然出会った少年と主人公のやり取りが秀逸。トリックも理解しやすく明快で、すっきりとした読後感は初め てのミステリー小説にぴったりです。 2.告白 湊《みなと》かなえ (著) 娘を級友に殺害された教師の復讐劇を描いたミステリー。事件に関連する人物たちが代わる代わる独白する、というスタイルで書かれています。犯人捜しを 楽しむというよりも、「正しさとは何なのか?」という倫理的な問いかけが重要なテーマになっています。推理ものは初挑戦という方でも、自分なりに考え ながら読み進めることができる一冊です。 3.謎解きはディナーのあとで 東川篤哉《ひがしかわあつや》 (著)  ミステリー初心者も気軽に楽しめる、コメディタッチの一冊です。根っからのお嬢様と執事のテンポのよい掛け合いに、すらすらと読み進めることができる でしょう。トリックも難解なものではないので、主人公たちと一緒に推理している感覚で読み進められます。お嬢様なのに刑事、執事なのに毒舌など、個性 的なキャラクターがたくさん登場します。 4.六枚のとんかつ 蘇部健一《そぶけんいち》 (著)  モテない保険調査員の小野由一《よしかず》、後輩社員で常にえづいている巨漢の早乙女、推理作家の古藤《ことう》が、事件を全然解決しない、「おバカ・ トリック」が炸裂する短編集。「論理的な」というミステリーに抱いていたイメージが崩壊すること間違いなし。くだらなくて思わず脱力してしまうような話 のみが収録されています。(テープ版のみ デイジー版製作予定) 5.田舎の刑事の趣味とお仕事 滝田務雄《たきたみちお》 (著)  わさびの盗難やコンビニでの立てこもり。殺人事件が起こらないようなのどかな田舎だって、難事件は発生します。最強の嫁にしてやられている黒川鈴木巡査 部長が、無能な白石と真面目な赤木という2人の部下と一緒に、さっそうと事件を解決します。キャラクター同士のやり取りと、意外にしっかりしているトリッ クが楽しい一冊です。 6.猫丸先輩の空論 倉知淳《くらちじゅん》 (著)  なぜか毎朝ベランダに置かれている水入りペットボトルに、交通事故現場に集まってくる無線タクシー。奇妙だけれど事件とはいえないほどの小事件を、年齢 不詳の童顔探偵・猫丸先輩が、のらりくらりと考えます。猫丸先輩の推理が、タイトル通り「空論」であって完全に事実が判明するわけではないために、少し 不思議な読後感が味わえます。 7.GOTH《ゴス》 夜の章 乙一《おついち》(著) 聞いた人が眉をひそめるような、悲惨なエピソードを求めている高校生の男女。そんな残酷な彼らの周りでは異常な事件がたびたび起き…。収録されている 3編は、どれも膝を打つような結末が用意されています。話はグロテスクですが、終始、端正で淡々とした文体で綴られているため、さらりと読むことができます。 8.クリスマス・プレゼント ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子(著) 「スーパーモデルのストーカー撃退法」「詐欺師と未亡人のだまし合い」「陰気な少年の復讐譚」などなど、16編が詰まった短編集。どの短編もスピーディーに 展開し、最後にはどんでん返しが用意されています。ミステリーの楽しさを知ることのできる一冊です。 9.放火魔《ほうかま》 折原一《おりはらいち》 (著)  詐欺、放火、交換殺人などなど。日常の陰に潜む犯罪をミステリー仕立てに描く本書は、オーソドックスな題材を巧みな構成で描いた短編集です。収録作には、 小説ならではの仕掛けが施されているものが多く、文字媒体の醍醐味とミステリーを読んだ後の爽快感を味わえます。 10.葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午《うたのしょうご》 (著)  昔、少しだけ探偵事務所にいた主人公が、後輩からある女性の相談に乗ってほしいと頼まれる。主人公は、ひき逃げにあった彼女の身内が保険金詐欺に巻き込ま れた証拠をつかむために奔走することになるが…。 読了後に「見事に騙された!!」と思わず叫んでしまう叙述《じょじゅつ》ミステリー。終盤のたたみかける 展開が予想外すぎます! 11.彼女は存在しない 浦賀和宏《うらがかずひろ》 (著)  横浜が舞台の多重人格のサイコ・ミステリーです。駅の前に立っている女性の正体は一体?恋人を殺したのは誰?が気になって、「存在しない」彼女が誰なの かを推理しながら読み進みます。登場人物の女性たちの関係性が、ラストであっという間に引っくり返るのには、舌を巻くこと必至です! 12.Another《アナザー》 綾辻行人《あやつじゆきと》(著) 主人公は新学期が始まった後に入学します。生きているのか?死者なのか?クラスメイトには見えていないらしい、眼帯をした少女の存在。入学後、生徒たち に次々と死が降りかかっていきます。死人が出ることを「呪い」ではなく「自然現象」のようにとらえる世界観が、不気味かつ新鮮です。先が気になって仕方 がない一冊。 13.イニシエーション・ラブ 乾《いぬい》くるみ(著) 語り部の「僕」はマユと出会い、やがて恋に落ちます。物語は大学生というモラトリアムの時期から社会人にかけて描かれる若者の恋物語…と見せかけて、 終盤の一文で傑作ミステリーに変貌します。読み返すと、作者のたくらみに思わず感嘆のため息がもれてしまうことでしょう。 14.迷路館の殺人 綾辻行人《あやつじゆきと》(著) 建築士中村青司《せいじ》が建てた奇怪な館。そこで起きる事件を描く館シリーズの第三作目です。迷路のような館に集められた若手作家たち。次々と起きる 殺人事件。本書は「一文の仕掛け」がいくつもほどこされていて、終盤で何度も物語がひっくり返ります。一作で世界が変わる瞬間を何度も味わえます。 15.殺戮《さつりく》にいたる病 我孫子武丸《わびこたけまる》(著) 街で起きる連続猟奇殺人事件。本書ではそれを「犯人」「元刑事」「犯人の身内」という三つの視点から描いていきます。「犯人」の視点が描かれているため 犯人は序盤から明らかです。しかし、ただのサイコサスペンスでは終わりません。一文で物語をひっくり返された後、あまりの衝撃に再読したくなること間違 いなしです!(点字版・テープ版)