3.今月のオススメ図書 メディア化の人気医療小説 読んでおきたい医療小説|医療の実態・人間の本質がリアル! BOOK OFFオンラインコラム より 『白い巨塔』をはじめ、『チーム・バチスタ』や『救命病棟24時』など、ドラマで高い視聴率を得ている人気ジャンルの医療もの。 惹きつけられるその魅力は、命を扱う医療の現場に権力や金、欲望や妬みに陰謀。 また、それとは真逆の優しさや愛、思いやりなど、人間の本質や医療の実態がリアルに描かれているところかもしれませんね。 ここでご紹介する医療小説はどんどん引き込まれていくので、医療ドラマは見るけど小説は難しそう…と思う人にもおすすめです! 1.『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊《かいどうたける》(著)、新潮社 東城大学医学部附属病院の“チーム・バチスタ”を襲う、原因不明の連続術中死。 マスコミの注目を集める手術を前に、不定愁訴外来の責任者である田口医師と、厚生労働省の白鳥に内部調査を依頼した。 これは医療ミスか、それとも殺人か? 田口の聞き取り調査が始まった─。 「第4回 このミステリーがすごい!」受賞作。映画やドラマにもなった大人気シリーズです。 “チーム・バチスタ”とは、心臓移植の代替手術である「バチスタ手術」専門の外科チームのこと。リーダーの桐生が集めた逸材が揃っています。 外科の医師でもある海堂尊《かいどうたける》さんが書いたからこそのリアリティを感じられる作品です。また医療の現場を知らない人にも分かりやすく、楽しめますよ。 シリーズ作品 @チーム・バチスタの栄光 成功率100%を誇る「チーム・バチスタ」のバチスタ手術が相次いで術中死。調査役に任命された田口は「チーム・バチスタ」メンバーへの聞き込みを開始するが、術死はそれでも続いていく…。 Aナイチンゲールの沈黙 東城大学医学部付属病院に伝説の歌姫が入院した一方、病院の歌姫がいる小児科からの依頼で小児愚痴外来を開くことに。だが患者の父親が惨殺される事件が発生する。 Bジェネラル・ルージュの凱旋 救命救急センター部長・速水晃一が収賄をしているという告発文が田口の元に届く。速水を信じる田口は調査を開始するが、この収賄疑惑はエシックス・コミティや白鳥、そして速水を巻き込んでいく。 Cイノセント・ゲリラの祝祭 田口が白鳥の依頼で出席した厚生労働省主催の会議は、医療事故を調査する組織設立に向けての会議に発展。会議では解剖至上主義者や法律家が既得権益を守ろうとする思惑が渦巻いていた。 Dアリアドネの弾丸 東城大学医学部付属病院がエーアイセンター運営に動き出し、その運営会議でエーアイセンターの命運を掛けた戦いが始まる。エーアイセンター内で拳銃による殺人事件が発生し、高階が警察に捕まってしまう。 Eケルベロスの肖像 東城大学医学部付属病院の元に「東城大とケルベロスの塔を破壊する」という脅迫状が送られてくる。田口は姫宮の依頼で送り主の特定に乗り出す一方でAiセンターも稼働に向けて着々と進行していた。しかし、そのAiセンターのシンポジウムの日、東城大を揺るがす事件が発生する。 2.『孤高のメス』 大鐘稔彦《おおがねなるひこ》(著)、幻冬舎 アウトサイダー医師の当麻のもとに、大量吐血で瀕死状態の「エホバの証人」の少女が担ぎ込まれる。 両親はその信条により輸血を拒否。手術をすることはできるのか─。 医師でもあった著者の大鐘さんは、かつてエホバの証人の無輸血手術を担当されこともあるのだとか。そのときの経験が生きた一作となっています。 物語の中に渦巻く医療ミスの隠ぺいや複雑な人間関係。医療界に潜む闇の姿からは、よりリアリティを感じられますよ。 シリーズ作品 @.孤高のメス─外科医当麻鉄彦〈第1巻〉 A.孤高のメス─外科医当麻鉄彦〈第2巻〉 B.孤高のメス─外科医当麻鉄彦〈第3巻〉 C.孤高のメス─外科医当麻鉄彦〈第4巻〉 D.孤高のメス─外科医当麻鉄彦〈第5巻〉 E.孤高のメス─外科医当麻鉄彦〈第6巻〉 F.孤高のメス─神の手にはあらず〈第1巻〉 G.孤高のメス─神の手にはあらず〈第2巻〉 H.孤高のメス─神の手にはあらず〈第3巻〉 I.孤高のメス─神の手にはあらず〈第4巻〉 J.孤高のメス 遥かなる峰 K.孤高のメス 死の淵よりの声 L.孤高のメス 完結篇 命ある限り 3.『神様のカルテ』 夏川草介(著)、小学館 信州にある、24時間365日対応の救急病院。そこで内科医を務める栗原一止《くりはらいちと》は、日々過酷な現場のなかで診療をこなしていた。 あるとき、母校の大学病院から誘いが舞い込む。 母校に戻れば妻との時間を作れるし、最新医療にも触れられる。悩む一止だが─。 夏川草介さんのデビュー作。小学館文庫小説賞を受賞し、映画化もされたヒット作です。 現役医師でもある夏川さんが、自身の地方病院での勤務経験をもと書いた作品。 医療制度や地域医療の矛盾のなかで命を見つめ、真摯に人と向き合う医療の本質に迫る心温まる作品です。 シリーズ作品 @神様のカルテ A神様のカルテ2 B神様のカルテ3 C神様のカルテ0《ゼロ》 D新章 神様のカルテ 4.『ノーフォールト』 岡井崇(著)、早川書房 深夜の当直で、容態が急変した妊婦に緊急帝王切開手術を行った柊。 子供は無事に生まれたが、母親の出血が止まらない。なんとか手術を切りに抜けたのも束の間、原因不明の出血が続いた母親は死亡してしまう。 その後、ショックを受ける柊に対し、遺族が訴訟を起こす。柊は徐々に精神的に追い詰められ─。 2009年に藤原紀香さん主演で、「ギネ 産婦人科の女たち」の名でドラマ化した本作。 産科医の過重労働や、医師の過失の有無に関わらず被害者に対して補償される「無過失補償制度」など知っておきたいことがリアルに描かれています。 著者は、産科医の岡井崇さん。現在の過酷な医療現場について考えさせられる作品です。 5.『白い巨塔』 山崎豊子(著)、新潮社 確かな技術と、厚い信頼を得る医学部第一外科助教授の財前五郎は、次期教授の座を確信していた。 しかし、財前の傲慢さに懸念を抱く現教授の東は、他大学からの移入を画策。それに対し戝前は、あらゆる術策をもって教授選を勝ち抜こうとする─。 医療小説の不朽の名作『白い巨塔』。医学界に渦巻く人間の欲望をリアルに描いた最高傑作です! 医療用語はやや難しいですが、これを読まずして医療小説は語れません。 癖のある面々が時期教授の座を狙い、ドロドロの駆け引きを繰り広げます。何度読んでも飽きることのない、色あせぬ作品です。 シリーズ作品 @白い巨塔 A白い巨塔 続 6.『聖なる怪物たち』 河原れん(著)、幻冬舎 夜間の救急外来で訪れた飛び込み出産の妊婦は、帝王切開の結果死亡してしまう。 身元不明の妊婦と、残された新生児。赤字経営の病院を舞台に、外科医の司馬健吾《しばけんご》は、私欲にまみれた「嘘」と「隠蔽《いんぺい》」の渦に飲み込まれていく─。 「代理出産ミステリー」と銘打って、2012年にテレビドラマ化された作品です。 代理出産や不妊治療、またその生命をあずかる病院の経営問題などを背景に、それぞれが守るべきもののためについた嘘と、罪の意識から生まれる葛藤が描かれます。 はたして何が「正義」と言えるのでしょうか。余韻を残すラストは、読者に正解を委ねられます。 7.『さまよえる脳髄』 逢坂剛《おおさかごう》(著)、集英社ほか (点字版・カセット版のみ) 精神科医の南川藍子が関わることになった刑事、プロ野球選手、連続殺人犯。この3人に共通するのは脳に損傷を受けていることだった。 やがて、連続殺人の魔の手が南川藍子に忍びよる。事件は解決したかに見えたが─。 脳科学と心理分析の知見から展開されるサイコサスペンス。 脳科学ブーム以前の1988年に出版され、1993年にテレビドラマ化、同年に映画化もされました。原作のエンタメ要素の高いサスペンスとしての面白さが、メディア化作品に活きています。 オーソドックスな展開ながら、最後のオチは秀逸の一言です。 8.『死の臓器』 麻野涼(著)、文芸社 テレビディレクターの沼崎は、自殺の名所で膵臓が摘出された形跡のある女性の遺体を発見する。 同じ頃、医師の日野誠一郎は、臓器売買の疑いをかけられていた。 日野を一方的にバッシングするマスコミに納得できない沼崎はこの2つの事件のつながりを解き明かしていく─。 実際にあった事件をモチーフに、腎不全患者の臓器移植や人工透析にまつわる社会的矛盾、医学会の問題点を突いたミステリー。 2015年にテレビドラマとして放送されました。 臓器移植医療の倫理と臓器売買の実態に迫った、まさに社会派という言葉がふさわしい重みのある作品です。 9.『がん消滅の罠 完全寛解《かんかい》の謎』 岩木一麻《かずま》(著)、宝島社 がんセンターの呼吸器内科の医師である夏目は、生命保険会社に勤める友人からある指摘を受ける。 夏目が末期がんと診断した患者たちが、給付金を受け取った後も生きており、しかも全員がんが消失しているというのだ─。 がんの医療技術からの生じる犯罪の可能性から着想を得た、という経緯がある本作。トリックのキモとなるがん治療最前線の技術がわかりやすく解説されています。 がん治療の実態に対して、正しい知識に導きたいという著者の意図が、ミステリー小説という形で見事に結実した作品です。 以上9作品をご紹介しました。 ご希望方は、貸出しまでお問合せください。