3.今月のオススメ図書 人気作家、佐伯泰英のシリーズものを紹介します。 先月号のつづきです。 〇古着屋総兵衛影始末シリーズ 全11巻 内容 慶長8年(1603年)、徳川家康が造営に着手した江戸の町は、戦国の気風を残し、町に入り込んだ浪人や無頼の徒により無法の地となっていた。毒をもって毒を制すべく、家康と側近の本多正純は、江戸を荒らす盗賊の中で西国浪人鳶沢成元《とびさわなるもと》を捕えて、命を助ける代わりに無法者達を一掃させた。そして江戸の町に古着屋を開き、それを隠れ蓑に徳川家の密偵として情報収集をするよう命じた。 元和2年(1616年)、死の床にあった家康は、鳶沢成元《とびさわなるもと》を呼び出し、自分が葬られる久能山《くのうさん》に所領《しょりょう》を与え、その隠れ里の分家と共に、徳川家危急の折に働く隠れ旗本となる事を命じた。 家康の死から85年後の元禄14年(1701年)、江戸城中松之廊下で刃傷事件が発生した年からこの物語の本編は始まる。鳶沢成元《とびさわなるもと》が富沢町《とみざわちょう》に開いた古着屋・大黒屋は、6代目の鳶沢勝頼《とびさわかつより》が主人となっていた。大黒屋が影旗本として暗躍している事を知り、また古着屋としての大黒屋に集まる金と情報に目をつけた柳沢吉保《よしやす》が、その力を己の物とすべく、鳶沢一族に攻撃を仕掛けてきた。家康との密約を守るため、影旗本としての矜持を賭けた大黒屋総兵衛勝頼の戦いが繰り広げられる。 〇新・古着屋総兵衛シリーズ 全18巻 内容 時代は享和《きょうわ》2年(1802年)、大黒屋6代目・鳶沢総兵衛勝頼の活躍した元禄・宝永《ほうえい》年間から97年の歳月が過ぎていた。この時、大黒屋9代目・総兵衛勝典《かつのり》は、労咳を患い、余命幾ばくも無い身となっていた。嫡男を流行り病で失い、若いころに店の女中との間にできた子供も鳶沢一族を率いる器でないことが明らかとなり、当主の嫡流《ちゃくりゅう》が途絶えるというかつて無い危機を一族は迎えようとしていた。しかし、後継者問題に頭を悩ませる大黒屋幹部達に、死の病に冒された勝典は一言告げる。 「血に非《あら》ず」 この言葉の真意を確かめることができずにいる内に、勝典の病は進行し、ついに没することとなった。一族による密葬の後、店の地下にある大広間で後継者を定めるための会議を続ける一番番頭の信一郎と長老達のもとに、1人の若者が店を訪れたことが伝えられる。その若者の名は、今坂勝臣《いまさかかつおみ》。かつて総兵衛勝頼が交趾《こうち》を訪れた際に、現地の娘との間になした子の子孫であった。それが真実であることを確かめた信一郎と長老達は、その器を見極めた上で鳶沢一族の新頭領として迎え入れることを決めた。故郷を追われて日本に辿り着いた勝臣もまた、その提案を受け入れることを決意。ここに、大黒屋10代目・鳶沢総兵衛勝臣が誕生し、今坂一族を加えた新たな大黒屋が生まれることとなった。 新たな時代を舞台にし、新たな主人公を据えた『新・古着屋総兵衛』シリーズが、ここに始まる!! 〇吉原裏同心シリーズ 全25巻 幼なじみで、人の妻となっていた汀女《ていじょ》と駆け落ちした神守幹次郎《かんもりみきじろう》は、追っ手を避けながら流れ着いた江戸で、吉原遊郭四郎兵衛会所の用心棒、裏同心として雇われる。幹次郎は、遊女たちに俳句などを教えることになった汀女や会所の面々と共に、吉原に起こる様々な事件を解決していく。 ・吉原裏同心抄 新吉原裏同心抄へと続きます。 〇夏目影二郎《なつめえいじろう》始末旅シリーズ 全15巻 内容 天保7年(1836年)、恋人の萌《もえ》を騙し、死に追いやった聖天《しょうてん》の仏七《ほとしち》を殺した罪で遠島の沙汰が下った夏目影二郎。その彼を牢から救い出したのは、勘定奉行となった父・常磐秀信《ときわひでのぶ》だった。秀信は、勘定奉行としての仕事の手始めに腐敗した八州廻り達の始末を影二郎に委《ゆだ》ねた。鏡心明智流《きょうしんあけちりゅう》の剣の腕を振るい、腐敗した役人達や悪党を討つ影二郎の旅が始まった。 国定忠治をはじめ、浅草弾左衛門《だんさえもん》や遠山景元《かげもと》などの、江戸や旅先で出会った人々の助けを得ながら父の秘命を果たす影二郎は、北は陸奥国の恐山から西は肥前《ひぜん》国長崎《ながさき》まで、日本全国を縦断して活躍する。しかし、天保の改革の失敗により老中・水野忠邦は失脚し、勘定奉行から大目付に出世していた秀信も幕閣から退いたことで、影二郎の御用旅は終わりを告げた。 そして7年後。萌の妹・若菜《わかな》との間に2人の子供も産まれ、平穏な暮らしをしていた影二郎のもとに、国定忠治が倒れたという知らせがもたらされた。忠治の最期を見届けるため、影二郎は最後の旅に出ることを決意する。 〇長崎絵師通吏辰次郎《とおりしんじろう》シリーズ 全2巻 あらすじ 享保4年(1719年)八朔《はっさく》(8月1日)、季次《すえつぐ》家の遺児・茂嘉《しげよし》を連れて江戸に来た長崎の絵師・通吏辰次郎。辰次郎は季次家没落の原因となった密貿易が冤罪である事を証明し家を再興させるために江戸に出てきた。しかし、そこで知った事件の真相は…(『悲愁《ひしゅう》の剣』)。 享保6年(1721年)、盲目の少女・おしのの眼の治療のため、長崎に戻った辰次郎に、長崎の町年寄達からオランダ相手の密貿易の頭取となるよう命が下される。密貿易の利をめぐって、唐人の秘密結社・黄巾党《こうきんとう》の刺客との戦いが繰り広げられる(『白虎の剣』)。 以上、佐伯泰英の主なシリーズものを、2か月にわたって紹介いたしました。不明な点、貸出しについては、お問合せください。