6.みんなの広場 皆様から投稿していただきました。 俳句の投稿 熊谷幸二郎さん 朝涼し外かたづけのゴミ袋  萩野けい (あさすずしそとかたづけのゴミぶくろ) ころころと喉のころころ風涼し  宇佐美咲子 (ころころとのどのころころかぜすずし) ワンピース着心地涼し子の土産  柿崎妙子 (ワンピースきごこちすずしこのみやげ) 崖落ちる水音涼し大蛇岳  熊谷幸二郎 (がけおちるみずおとすずしおろちだけ) 武田金三郎さんの投稿 エッセイ風自分史・三郎 その一八 フケ男 武田金三郎 私はひどいフケ症である。自覚したのは中学生ころであったか。家に風呂がなかったから二週間に一度ほど、次兄と隣町の八郎潟町一日市《ひといち》の銭湯に自転車で通ったものだが、頭を洗うのはそのときくらいであった。 頭が痒くなると十本の指でゴシゴシ、ゴシゴシと掻きたてる。するとフケがサラサラと降るように落ちるのだ。高校生になってもこれをやっていたし、それどころか社会人になっても、四十半ばで盲学校に入った寄宿舎生活でもそうしていた。 高校生当時、唯一の親友である小玉正義と卒業するまでの三年間、たいてい隣り合って机を並べていたのだが、彼がしばしば肩に落ちているフケをパタパタと掌で払い落としてくれたし、営林署勤務になってからは、事務仕事をしている背後を女子職員が通りすがりにパタパタしてくれていた。 それでも頭を洗うことなく、痒くなると新聞紙を広げては十本の指でゴシゴシをやっていた。社会人になってから一段階グレードアップし、仕上げとして洋服ブラシで頭部や肩を払い落として気を良くしていた。 不潔癖はこれだけではない。同じ靴下を何日履き通したことか。毎日履き替えるなど思ってもみなかった。通常一週間単位であったかもしれないし、二週間だってあったとは思う。朝に足を通すときゴワゴワした感触になっている。すると裏返しをしたことも。裏返しをしたからってどうなるものでもないのにね。 会合などで畳敷きの部屋に鞍坐をかいて座るさい、膝をしっかり折りたたんで臭い靴下の足を太股にかくすのに苦心した。毎日の着脱でも顔をそむけなければならなかったけれど、靴下とは元来臭いものと思い込んでいたのでした。 さすが下着類は靴下のように裏返しをしてまで使い続けることはなかったものの、それでも五,六日は普通。いやいや、包み隠さず告白するならパンツも裏返し使用したことだってあるにはあった。 盲学校保健理療科だから実技授業では白衣を着る。これだって何日も洗濯することはなかった。按摩マッサージは肉体労働並みに汗をかく。それでもハンガーに吊るしておけば翌日は乾く。その繰り返し。カラポヤミでそうしていたのか、と言えばそうでもない。そんなものだと思っていただけのことである。いやいや、思うもなにもなかったですね。 盲学校を卒業して治療院を開業したさい、ナマイキにもパートを雇ったところ、この人がこまめに洗濯をしてくれたのには驚いた。彼女は前日使用した手拭やタオル、それに白衣まで洗濯してくれた。のみならず、取り込むと一枚一枚必ずアイロンまでかけている。洗濯ってこのようにこまめにやるものなのか。遅ればせながら目から鱗が落ちた。 遠い昔、母はよく洗濯をしていた。いい物を着せれない分、せめて身奇麗にしないと。そんなことを呟いていた記憶がある。母の洗濯は隣近所で感心されていたのも知っている。なのに私はどうしてこうなったのだろう。やっぱりカラポヤミであったの一語かも。むろん今は違うけど。けど信じていただけるかどうか。まあいいけれど。 ○皆様からの投稿について 「点字図書館だより」に、読んだ本の感想や、体験談、短歌・俳句など利用者の皆様からの投稿をお待ちしております。 お預かりした作品は、「点字図書館だより」内「みんなの広場」でご紹介させて頂きます。 (送付先) 〒011−0943 秋田市土崎港南3丁目2の58  秋田県点字図書館 (FAXを利用の場合は) 018−845-7772 (メールを利用の場合は) アドレス tenji@fukinoto.or.jp いずれも「みんなの広場」係まで お電話での聞き取りでも可能です。