4.みんなの広場 秋田市の浅井成雄《あさいしげお》さんより投稿いただきました。 「十年分の五年間」                     浅井成雄《あさいしげお》(六十代) 終業のチャイムが鳴ると中学生らしい男女が教室から出てきました。グループの屈託《くったく》ない笑い声に私は気持ちが和《なご)みました。盲学校で社会人コースに通った五年前のことだ。 ここで私は中途失明生活の手ほどきを受けました。このときプレクストークも教わった。そして、点字図書館に電話しました。 デイジーの有難味《ありがたみ》は何度も書いているし、また書き尽《つ》くせるものでもない。最初に借りたのが趣味である「落語大百科全五巻」でした。 音声図書は聖人君子《せいじんくんし》向けしかないと思っていた私はこれに味をしめ、以来借りまくった。借金ではないからよかろう。中にはご婦人にお聞かせできないタイトルもあって貸出し係のお嬢さんには失礼しました。 前から読もうとして読む機会がなかった本、若い頃読んだ本の読み直し、また今までの自分だったら手にも取らなかっただろう本。この五年間の読書はそれ以前の十年分に相当するのではないかとも思う。いまサピエにはデイジーの蔵書が五万点あると聞く。先日借りた論語には「人間死ぬまで修養《しゅうよう》を積むべし」とありました。デイジーには今後も宜しくお願いしよう。 以上は読むことについて。点字図書館に出会って嬉しかったもう一つは、図書館だよりの「みんなの広場」です。私はモノを書くのが好きなので毎月の投稿は楽しみだ。同時に恥と汗をかいています。パソコンがないから視野欠損だが拡大読書機で原稿用紙のます目を埋める。これも五年になります。乱筆なので清書なさる方はご苦労でしょうが・・・。 中身は手当たり次第の読後感《どくごかん》が主です。身辺雑記の募集もありますが小生《しょうせい》食っちゃ寝食っちゃ寝の毎日ではこれと言って話題もない。こんな具合でとりとめのないことを1000字程度にまとめています。 いずれにせよ文章を考えるのは脳の老化防止に役立つと言われて私はその気になっています。表現語句の工夫はそうですし全体の構成も大事です。何より書く内容に関する勉強が必要と思います。本欄に投稿を始めて気付いたのですが、音訳で聞いて分かり易《やす》い文章というのがあるようだ。これからも新しい発見があるかも知れません。月に一度私はまだ僅《わず》かでも視力がある限り書き続ける。原稿用紙に向かうことが生活のリズムを生んでいると感じる最近です。 (おわり) 視覚障害者俳句サークル「千秋句会」さんより俳句の投稿いただきました。 ・晩秋や 鉢片付けし 庭の隅  萩野《はぎの》けい さん ・城堀《しろぼり》の 水底透《みずそこす》けて 秋深《ふか》む  熊谷幸二郎《くまがいこうじろう》 さん ・幼子《おさなご》の 手よりこぼるる 木《こ》の実《み》かな  宇佐美咲子《うさみさきこ》 さん 三種町《みたねちょう》の武田金三郎《たけだきんざぶろう》さんより投稿いただきました。 秋田県一短い小説・その四 鍋島《なべしま》教頭先生 鍋島《なべしま》教頭先生が赴任してきたのはミチヨが小学五年生になったばかりのことであった。 「皆さんこんにちは。鍋島甫《なべしまはじめ》と申します」 新任式の日、ミチヨに限らず、緊張して体育館に並んでいた全校児童たちはドキッとして驚いた。児童たちだけでなく横に並んでいた先生たちも一様に驚いた顔をしている。顔が大きく眉が太くて長く、右と左が一本になっているみたいに見える。目もギロリと大きいし、鼻も唇も粘土で作ったように大きい。 怖そうな先生だな、と思って見上げていたら、唇がガバッと開いた瞬間、体育館に雷が落ちたような大音声《だいおんじょう》なのだ。 「コラーッ、止まれ!」 休み時間、ガイガイワヤワヤと騒いでいるとき、廊下で教頭先生の雷が炸裂したので教室は一瞬にして静まり返った。ミチヨの教室だけでなく、南校舎二階にある六つの教室全てが静まり返ってしまっている。四年生男子が廊下を全力で走っていたのだ。それだから一年生から六年生まで全児童たちは鍋島教頭先生を見つけると、まるで土佐犬《とさいぬ》を避けるように全神経を緊張させてお辞儀をして通過するのであった。 二学期の終わりころであった。ミチヨと晴子《はるこ》は担任の早坂《はやさか》先生に学級日誌の整理を頼まれて居残っていた。それが終わると、ミチヨは晴子より一足先に教室を出た。階段を下りた所で晴子を驚かしてやるためである。そこはほの暗《ぐら》くなっていて、一人で降りていくと少し怖い、と晴子が言っていたことを思い出したからである。やがて階段を下りてくる足音がする。 「アワワワワー!」 足音が階段を降りきった瞬間、ミチヨは腹にありったけの力を込めて叫びながら両足で床をばたばたと踏み鳴らした。 「オオー!」 晴子の悲鳴どころか、あの鍋島教頭先生が唇をわなわな震わせて立ち竦《すく》んでいるではないか。ミチヨは失神して倒れるほど驚いた。フーッと弱弱しい溜息が聞こえてくる。 「おっ、驚かすだけはやめてくれないか」 教頭先生はそう言って下りてきたばかりの階段をまた上がって行った。あれ以来、ミチヨは教頭先生への恐怖心が嘘のように消えてしまった。 あのとき鍋島教頭先生は下りてきた階段をどうしてまた上がって行ったのだろう。ミチヨは大人になってからもふっと考えることがある。ミチヨの夫は顔が厳《いか》つくて声も大きい。彼と結婚をすると告げたら、両親も兄弟たちも友達も、全てに反対されたほどである。小学校当時、あの鍋島教頭先生にめぐり会っていなかったら、ミチヨは最愛の夫とこうして暮らしてはいなかったことだろうと思っている。 最後に、ご利用者様からのご希望によりこのコーナーにて料理レシピをお届けします。 今月は、栄養価が高くて美味しい旬のカブを余すことなく使ったレシピをご紹介します。 ○とろーり かぶとえびのうま煮 えびと鰹の旨味がしみたかぶ。お出汁《だし》と一緒にいただいて身体ほっこり〜。 材料(2人分)  かぶ  150g(小3個)  えび  50g  鰹削り節  3g(2分の1パック)  水  1カップ  しょうゆ  小さじ1  みりん  小さじ2  塩  小さじ4分の1  水溶き片栗粉  少々  三つ葉(あれば)  少々 作り方 @かぶの皮をむいて、食べやすい大きさに切る。えびは2cm程度に切って、さっと熱湯をかける。 Aお鍋に水と鰹節・かぶを入れて火にかける。沸騰したらえびを入れて、アクが出たら取る。蓋をして煮込む。 Bかぶが柔らかくなったら、しょうゆ・みりん・塩を加えて軽く煮込む。 C加熱しながら水溶き片栗粉を少々加えて、出汁《だし》にとろみをつける。 D器に盛り付け、三つ葉を添えて出来上がり。 コツ、ポイント 鰹節をそのまま入れるので、出汁《だし》を取る手間がなく簡単! ○鶏肉と蕪の炒め煮 簡単に。ホクホクの蕪が鶏肉のうまみを吸い取ってあっさりだけど美味しいです。 材料  蕪(小)  4〜5個  鶏肉  2枚  塩  適量  かつお節パック  1パック  醤油  大さじ1程度  みりん  小さじ1〜2 作り方 @鶏肉は筋切りをして一口大に切り、蕪、蕪の葉も食べやすい大きさに切っておく。 A鶏肉全体に塩を振り、鍋に鶏肉、蕪を入れて火を付けて蓋をして蒸し焼きにする。 B鶏肉に9割程度火が通ったら醤油・みりんを入れて軽く炒める。 CBに蕪の葉、鰹節を入れてよく混ぜたら味を見て醤油で味を調える。お好みでごま油をまわしかけても美味しいです。 コツ・ポイント 鶏肉は、もも肉を使用しましたが、お好みで胸肉でもオッケーです。 以上、「cook pad」掲載記事から抜粋しました。 他に何か、ご希望・ご意見がありましたら、お知らせください。 お待ちしております。