6.みんなの広場 皆様から投稿していただきました。 大仙市のまめだいふくさん ☆梅雨(つゆ)の空 蒸されてできた 茶碗蒸し ☆あたしんち 台風荒れた 盆休み 熊谷幸二郎さん 俳句の投稿 桑の葉の 広がる庭や 草の家 萩野ケイ (くわのはの ひろがるにわや くさのいえ) 園児らの はじめて泊まる 夏休み 宇佐美咲子 (えんじらの はじめてとまる なつやすみ) 短夜や 川風誘ふ 下駄の音 柿崎妙子 (みじかよや かわかぜさそう げたのおと) 酔ふように 揺れる一本 夏の草 熊谷幸二郎 (ようように ゆれるいっぽん なつのくさ) 武田金三郎さん エッセイ風自分史・三郎 その一六  二度も落ちた面接試験 武田金三郎 国有林野(こくゆうりんや)を管轄しているのが林野庁《りんやちょう》で、こ の下に全国十四ヵ所に営林局があり、この下に三百六十営林署が置かれていた。秋田市には秋田営林局があって、ここは秋田,山形両県の三十五営林署を管轄していた、と今では過去形で語らなければならない。昭和三十七年当時、秋田営林局は二十人ほどを新規採用していた。 この年、五城目高校林業科で私を含む三人が公務員試験を合格した。三人も合格したのはこの年が初めてであった。それまでは1人かゼロ、二人が合格するのさえ珍しかった。試験で合格すると面接が行われるのだが、過去に面接で落とされた人はいないと聞く。 一対一で人と話をするのを何よりも苦手にしている私にとって、過去にこれで落とされた人がいない、という事実は何よりの安心であった。けれど落とされた。学校始まって以来のことだ。むろん他の二人は合格している。 過去に面接で落とされた人がいないというので、私は合格発表の日すら気にしていなかったものだから、その日を忘れていたくらいであった。その朝、学校に行ったら教室が何やらシンとしている。「オイッス」と言ったら「オイッス」と返してはくれるものの、私から目を逸らすのだ。どうも変だ。 「金三郎、残念であったな」 私と机を並べて座っている、一年生から親友で通してきた小玉正義(こだままさよし)が言いにくそうに言った。それでか。そのときになってようやく気がついた。その日、秋田魁新報紙に合格発表が載っていたのである。私の家では新聞など取っていない。 新規採用されなかった私は卒業した四月、五城目営林署に臨時作業員として雇用《こよう》された。契約は月雇《つきやと》いという、初めて耳にするものであった。これは月単位で雇用が継続されるもので、毎月更新されながら十二月十五日で雇用満了となるものだそうだ。辞令書に明示されている日給が三百十六円であった。 むろんこの年も公務員試験を受けた。そうして合格した。それでまた面接を受けたのだがまたしても落とされた。よもや二度も落とされるなど考えてもみなかった、のでその日私は山奥の大倉又《だいくらまた》事業所から十キロほど下流の杉沢貯木場《すぎさわちょぼくじょう》まで歩いた。合格発表の載っている秋田魁新報紙を見るためだけのことだ。それでなくても歩きにくい森林鉄道には雪さえ積もっているというのに。 何もわざわざでかけなくてもいいものを、十二月に入って山の主《おも》な仕事が終わり、あとは山じまいをまつだけであったし、冬にはめったにない晴天であったこと、気分もさわやか。それで出かけた。 「武田君、来たか」 事務所のドアを勢いよく開けたら石川勤治主任がモゴッとした口調で言った。ふだん、こんな言い方をする主任ではない。何ということか。去年面接で落とされたのが学校始まって以来と言われたのに二度なのだ。さすがに三度目に挑戦する意欲を喪失していた。帰路《きろ》、なら一般職に鞍替えしてしまえ。やけくそ気味で決意したほどであった。 ○皆様からの投稿について 「点字図書館だより」に、読んだ本の感想や、体験談、短歌・俳句など利用者の皆様からの投稿をお待ちしております。 お預かりした作品は、「点字図書館だより」内「みんなの広場」でご紹介させて頂きます。 (送付先) 〒011-0943 秋田市土崎港南3丁目2の58 秋田県点字図書館 (FAXを利用の場合は) 018-845-7772 (メールを利用の場合は) アドレスtenji@fukinoto.or.jp いずれも「みんなの広場」係まで お電話での聞き取りでも可能です。